( ここ の 続き)
「モーフィアスを助ける」という湧き上がる確信が、それまで彼に宿っていた恐怖や不信を薄めたのであろう。
彼の能力は明らかに一段階ギヤを上げ、より速く、柔らかく、強くなっていた。
”信じる”と”決断”の連鎖
彼はモーフィアスを助け出す。しかしエージェントに行く手を阻まれ、ただ1人マトリックス内に取り残されてしまった。なんとか脱出を試みるが、あと一歩のところで殺されてしまう。
ネオの心臓が停止したことを示すコンピュータのブザー音を、革命軍のクルーは信じることができない。
その時、新たな”信じる”が物語をひっくり返す。
トリニティは預言者オラクルより「あなたが愛した男こそが救世主」であると告げられていた。
トリニティは”確信”する。ネオへの愛を。それは彼が救世主に他ならないことを意味する。
彼女はプラグに繋がれたまま横たわるネオの体に身を寄せ、そっと口づけをした。
これによりネオは再び覚醒する。
気づいたエージェントは彼を殺そうと銃弾を浴びせるが、今度は避けるまでもない。
トリニティの”決断”により復活したネオはさらなる進化を遂げていた。
銃弾は手をかざすだけで床へバラバラと落ちた。
エージェントスミスのパンチももはや遅い。
彼は視線をやることもなく片手で全ての攻撃を受け流し、エージェントスミスを破壊した。
”汝自身を知れ”
預言者オラクルがネオに与えた言葉は「汝自身を知れ」であった。
それは外部環境を計算することで答えを導き出す機械的な判断とは真逆のプロセスを示している。
“確信”は常にどこからか「やってくる」。人間はそれを、最も信じるに値するものだと肌触りで感じる。
これこそ人間が持つ、機械には理解しえない力である。
この”信じる”力が”決断”となり、人から人へ連鎖することにより、物語は回転数を上げてゆく。
そもそもマトリックスってなんやねん?
このマトリックスはVER.6
続編にあたる『マトリックス・リローデッド』と『マトリックス・レボリューションズ』では仮想現実「マトリックス」の全体像が明かされる。
マトリックスの設計は、「アーキテクト」という設計者プログラムに一任されている。
マトリックスの父と言われる存在で、マトリックス内にお爺ちゃんの姿で現れる。
アーキテクトによると、ネオ達がいるマトリックスはver.6にあたり、かつて5回のヴァージョンアップを経験している。
一番初めに設計されたマトリックスはまるで理想郷だった。アーキテクトにとっては最高傑作だったらしい。
しかし肝心の人間達には受け入れられなかった。あまりにも完璧すぎたのだ。
全く揺らぎのない計算しつくされた理想郷を人間は現実であると思えない。
最初のマトリックスは人間の全滅によりすぐに崩壊した。
次に設計されたマトリックスには、あえて不合理、カオス、グロテスクな状況が盛り込まれた。
が、これも人間に受け入れられず崩壊した。
続いて設計された三番目のマトリックス。ここではあえて不確定要素を盛り込み、人間に選択の余地を与えた。 これが功を奏した。選択を与えることで、99.9%の人間がプログラムを受け入れたのだ。
この創造に寄与したのが、預言者オラクルである。
選択を司るプログラムである彼女は、人間に自由意志による選択を与えることでマトリックスが安定することを発見した。マトリックスの母とも言える存在である。
これによりマトリックスの寿命は飛躍的に伸びた。
バグ=アノマリー(変則要素)の出現
しかし同時に予期せぬ事態が発生した。
プログラムの中に不確定要素を盛り込むということは、]プログラムの中に常に矛盾を抱え込むことを意味する。
それが、プログラムのバグとも言えるアノマリー(変則要素)の出現をもたらした。
・ネオやモーフィアスらマトリックスから目覚めてしまう人間達。
・キーメイカーら自ら自我を持つプログラム達。
・そしてマトリックスそのもののコントロールを目論んで暴走するエージェントスミス。
彼らバグであるアノマリーの存在はマトリックスに不均衡を与え、放置すればやがてシステム全体に崩壊をもたらすだろう。
この問題を解決するためにアーキテクトが用意したシステムが『THE ONE=救世主システム』である。
THE ONE=救世主システム
マトリックス内で語られるTHE ONE=救世主とは、マトリックスを破壊し、機械の支配から人類を解放する人間のことではない。
選択システムを採用したマトリックス内のバグやエラーであるアノマリーの数がある一定を超えたとき、その統一体としてのTHE ONE=救世主が現れる。いわばバグの王様みたいなものだ。
つまりTHE ONE=救世主の登場とは、あらかじめアーキテクトにより書き込まれたプログラムであり機械側のシナリオなのである。
救世主はプログラムの選択に導かれながら、最後はアーキテクトの部屋へ至るよう誘導される。
そこで、マトリックスに取り込まれシステムのヴァージョンアップに貢献するか、全人類を絶滅させるか、2つに1つの選択を迫られる。
マトリックスに取り込まれることを選択した場合、地下都市ザイオンは破壊され、マトリックスはヴァージョンアップする。その後救世主はマトリックス内から女16人、男7人を選び出し、ザイオンを再建しなければならない。
ヴァージョンアップしたマトリックスはさらなる安定を手に入れる。
ネオ以前に5人の救世主がいたが、全員こちらを選択した。これが劇中のマトリックスがver.6である理由だ。
ネオが全人類の絶滅を選べば機械側もエネルギー源を失い絶滅するのではないか?とアーキテクトへ詰め寄るが、彼はこれは否定する。
もし全ての人類が滅んでも、機械側は規模を縮小するだけで完全に絶滅することは無いという。
この二択はキツい。
まんまと袋小路へ追い込まれた気分だ。
自由意志で選択を続けてきたと思いきや、全てがプログラムの手のひらの上だったとは。
もはや人間には機械の奴隷になる道しか残されていないのか?
これじゃ終われねえ!ここから『マトリックス徹底考察』!!
残されたいくつかの矛盾
本編で語られるマトリックスの世界観はここまで。
まるでディストピア映画のようだが、その終わり方にはなんとも言えない“含み”がある。
アーキテクトとネオのやりとりで語られた内容には、いくつかの矛盾した点を発見することもできる。
(ここ に続く)
[0回] PR
http://shinkoh.iga-log.com/%E3%81%BF%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%8C%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%93%E3%81%A8/%E3%80%8C%E6%98%A0%E7%94%BB%20%E3%83%9E%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%80%8D%E3%81%A7%E3%80%81%E6%95%91%E4%B8%96%E4%B8%BB%E3%81%AF%E3%80%81%E8%98%87%E3%81%A3%E3%81%9F%20%E2%9D%A3%20ver.3「映画 マトリックス」で、救世主は、蘇った ❣ Ver.3
|