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北朝鮮の「爆破」で韓国がいよいよ正念場を迎えるワケ
2020年6月16日午後に完全破壊された北南共同連絡事務所 - 写真=朝鮮通信/時事通信フォト
■南北統一で歩みよる韓国と瀬戸際外交の北朝鮮
6月16日、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の指揮によって、開城(ケソン)の南北共同連絡事務所が爆破された。爆破の実行は事前の通告通りだった。爆破の後、金与正氏は今後の対韓工作を軍部に委ねると表明し、自らの指導力を世界に誇示した。
【写真】2020年6月16日午後に完全破壊された北南共同連絡事務所
その背景には、金日成、正日、正恩と続く金一族による北朝鮮の独裁体制をさらに引き締め、持続力を高める狙いがある。
今回、特に注目されるのは、6月に入って金与正氏の強硬姿勢が鮮明になったことだ。北朝鮮は韓国を一方的に罵倒している。南北統一を目指してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮に対話を求めているが、北朝鮮は無視し続けている。その意味するところは、北朝鮮の眼中に韓国の姿はなく、米国を意識しているということだ。
北朝鮮は、軍事挑発によって韓国を揺さぶると同時に米国からの譲歩を引き出したいと考えているはずだ。そうした北朝鮮の政策で最も困っているのは韓国の文政権だろう。これまで文大統領は対北朝鮮の融和政策を推進してきた。
ところが、北朝鮮からは相手にされず、むしろ、これまでの合意を反故にする姿勢が明確になっている。文政権にとっては、かなり厳しい状況に追い込まれたと考えるべきだ。それを狙って、北朝鮮の“瀬戸際外交”が加速化する可能性は高まっている。連絡所爆破はその兆候の1つと見るべきだ。
■なぜ金一族の独裁が維持できているのか
過去、北朝鮮は国際情勢の変化を機敏に察知して外交政策を実施してきた。
自国内の経済・社会が困窮すると、軍事挑発や対外強硬姿勢を鮮明化する“瀬戸際外交”を進めた。世界の覇権国である米国は、核攻撃力を持つ北朝鮮の暴走を放置できない。米国は中国など国連安保理常任理事国の賛同をとり、圧力と外交交渉を用いて北朝鮮の暴走を抑えようとした。
国際社会の圧力に直面すると、北朝鮮は表向き「核を放棄する」と述べ、米国などから譲歩を引き出し、金一族の独裁体制の維持につなげた。状況が幾分か落ち着くと、北朝鮮は瀬戸際外交から“ほほえみ外交”に方針を転換した。
それによって米国の圧力を遠ざけ、核兵器の開発を秘密裏に続けた。韓国は北朝鮮の瀬戸際外交とほほ笑み外交の矢面に立たされ、いいように使われ続けている。北朝鮮問題を考えるにあたっては、以上の流れを念頭に置く必要がある。
■“ほほえみ外交の切り礼”金与正の変貌
6月に入り、北朝鮮は金与正氏の指揮の下で韓国への強硬姿勢を鮮明化した。金与正氏は文政権に対するほほえみ外交の切り札だった。その人物が韓国を罵倒し、特使派遣までも「許可しない」と完全に相手にしていない。
韓国社会の動揺は相当だろう。開城と金剛山周辺には北朝鮮の軍部隊が展開されている。それは、北朝鮮が瀬戸際外交に転じたことを示唆する。
背景には、北朝鮮の経済と社会の厳しさがある。2019年2月、ハノイでの米朝首脳会談で北朝鮮は制裁の緩和などの成果を得られなかった。その責任を問われ、金与正氏は謹慎を命じられた。
さらに、コロナショックによって中朝国境が封鎖され、北朝鮮は食糧難など塗炭の苦しみの中にある。事態打開のために、金正恩委員長は与正氏に汚名挽回のチャンスを与えた可能性がある。
与正氏が対韓批判などの前面に出ることで、金一族による独裁体制が続くことをこれまで以上に明確に世界に示す狙いもあるだろう。6月以降、北朝鮮が強硬姿勢を鮮明化した裏側にはそうした要因があると考えられる。
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