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獲る漁業から育てる漁業へ――ヤンマー、海を耕す(転記記事)
---転記始め---


獲る漁業から育てる漁業へ──ヤンマー、海を耕す
国東市、漁協との共同開発で生まれた地域ブランド「くにさきOYSTER」

2017年3月6日

134

2012年に創業100年を迎えたヤンマー。多くの人が“老舗の農業機器メーカー”として知る同社だが、近年、牡蠣の養殖という意外な事業に乗り出し、2015年12月からは「くにさきOYSTER」というブランドで出荷を開始している。ヤンマーと牡蠣、一見するとつながりなど皆無に思える事業がなぜ始まったのか、その歴史を訪ねてみたい。

殻が美しく濃厚な旨味が生まれる
「シングルシード」で牡蠣を養殖

大分県の北東部、国東半島の東側に位置する国東市は、「クヌギ林とため池による循環型農林業」が世界農業遺産として認定された、自然豊かな里である。さらに、瀬戸内海の西端に面し、豊後水道から来遊する魚類の回遊路にもあたる豊後灘海域を有することで、海の幸にも恵まれている。この美しい環境の中で育まれているのが、「くにさきOYSTER」だ。

「私たちの牡蠣は、まず殻の膨らみに特徴があります。均整の取れたカップ型をしており、そのために身の入りが安定して濃厚な旨味が生まれる。牡蠣の旨さは殻の形も大きく関わりますから、日本はもちろんですが世界の牡蠣ファンにとっても、くにさきOYSTERの形は理想的だと思いますよ」

ヤンマー株式会社
マリンファーム 所長
加藤元一氏

牡蠣に対する思いをこう力強く語るのは、国東市にあるヤンマーの水産研究開発施設「マリンファーム」の所長を務める加藤元一氏だ。日本で養殖されている牡蠣といえば、ホタテ貝の殻に牡蠣の幼生を付着させた種苗を、1列にズラリとひもでつなげ、これを海中につるして育てる手法が一般的だった。大量に養殖できるため、かつては牡蠣養殖の革命的手法とされていたこともある。

しかし、この方法では殻の形やサイズなどをコントロールすることが難しく、また海中につるしたままで育成するため殻にフジツボや海藻などの付着物がつくことは避けられなかった。さらに、長いひもを切って収穫する際、牡蠣が落下して殻が破損することも多かった。

「それでも、この牡蠣養殖方法は従来の日本の食文化の中では十分に役目を果たしていました。なぜなら、日本では牡蠣フライや鍋料理など加熱して食されるのが一般的であり、 “むき身”で流通する方が好まれていた。つまり、より大きな身が好まれる傾向がある一方、殻の形は問われなかったわけです」

ところが、日本人の食のスタイルにも変化が表れ、殻ごと氷に載せて生牡蠣の状態を楽しむなど、欧米型の食べ方も普及してきた。これまで通りのむき身のニーズに加え、殻つきでの流通も求められるようになり、大きさよりも形が整った殻のきれいな牡蠣も必要とされるという変化が生まれ始めたのだ。

「そこで私たちが着手したのが、“シングルシード”と呼ばれる牡蠣の養殖方法です。これは、種苗をひもでくくることはせず、ふ化から収穫まで牡蠣一つひとつをバラバラの状態で育てるやり方です。バラバラであるため数量をコントロールしやすく、カゴなどに入れ空間的な余裕を持たせながら育てます。シングルシード手法は従来のやり方より手間も難しさも増えますが、殻の形が整った良質な牡蠣養殖を追求するなら、やはりこのやり方が適しています。アメリカやフランス、そしてオーストラリアなどの牡蠣消費国で好まれているのもシングルシードで育てられた、形のきれいな牡蠣なんです」

くにさきOYSTERは、豊後灘海域の干潟の漁場と沖合の漁場、両方を活用して育てられている。干潟漁場は牡蠣の身を成長させるのに適しており、波のある沖合漁場には殻の成長を促進する作用がある。マリンファームでは、これらの漁場を適切に組み合わせることで、最適な牡蠣養殖環境を実現しているのだ。

国東市と地元漁協、そしてヤンマーが
三位一体となり地域振興を目指す

それにしても、なぜヤンマーが牡蠣の養殖事業を行っているのだろうか。農業機器メーカーのイメージが強い同社だが、その領域はアグリ事業のみならず、大型船舶のディーゼルエンジンやガスタービンエンジンなどを生産するエンジン事業、そしてマリンプレジャーボートや漁船の生産および海洋設備の開発を行うマリン事業など多岐にわたる。漁業とも関連が深かったのだ。

「漁業者や漁獲量の減少など、国内水産業には課題もあります。我々としても当然、機械だけをつくっているわけにはいかなくなる。水産資源の再生や、“獲る漁業から育てる漁業”への拡大に貢献することが、当社の使命となってきたわけです」

同社は2006年から牡蠣やアサリといった二枚貝の種苗育成に欠かせない、生物餌料の商品化に乗り出している。人工種苗を生産する全国の種苗センターに、安定して餌料を供給するためだ。また2012年には、二枚貝の種苗と、これを低コストで育成することのできる中間育成装置を商品化。全国の養殖を支える新たな事業を、着実に拡大してきた。

「国東市の漁協から相談を受けたのが、ちょうどこの頃でした。国東市は古くから太刀魚やタコの漁業が盛んでしたが、温暖化などの影響もあり漁獲量は減少傾向にありました。また、クルマエビの養殖も行われてきましたが、経営が成り立たなくなり閉鎖された状態でした。豊かな自然に恵まれた国東市の漁業を、子どもたちの世代にもつなげたい。そんな漁協の願いと、日本の水産業の持続と発展に貢献したい当社の思いが合致することで、2013年から牡蠣養殖の実証試験を開始する運びとなりました」

クルマエビの養殖施設跡地を活用し、国東市と地元漁協、そしてヤンマーが三位一体となってスタートした「くにさきOYSTER」の開発。牡蠣は生まれてからの期間が短いほど雑味が少なく純粋な味わいが楽しめるため、2月から5月に養殖を開始し、12月から翌年の4月までに出荷。つまり1年前後という短い養殖期間で、出荷できるサイズにまで育てている。出荷までに1年半程度はかかる一般的な養殖牡蠣とは、一線を画しているのだ。

「シングルシードで養殖する場合、養殖カゴの中で牡蠣が波に揺らされます。牡蠣の殻は、下側の先端が反り返る方向に成長していきますが、カゴの中で波に揺らされることで先端が適度に削られ、深いカップ型に成長していきます。殻の形一つにも、当社の養殖技術が生かされ、くにさきOYSTERの商品価値を高めています」

美しい殻付きのまま、生食用として提供される理想の牡蠣を追求しているため、安全性にも厳しい基準を設けている。ヤンマー初となる、人の口に直接入る“食品”である。その基準は、どんなに強化してもし過ぎるということはないという。2週間に1度の頻度で養殖海域の水質と牡蠣の検査を行うほか、水揚げされた牡蠣は各種の細菌やウイルスを通さない細かい目のろ過膜を通した、精製ろ過海水で20時間浄化。もちろん出荷前にも収穫ロットごとに検査を行い、各種細菌やウイルスが基準値以下であるか徹底して調べ上げている。

「高品質で安全な牡蠣を目指すのは大前提ですが、環境への配慮も不可欠であると考えています。海域の水質検査だけでなく、干潟と沖合の漁場を移動しながら生育させるのも、1年以内で出荷するのも、品質を追求するとともに環境への負荷低減にもつながっている。手間はかかりますが、それを惜しむつもりはありません」

2015年末から出荷を開始しているくにさきOYSTER。主に東京や大阪などのレストランに納められているそうだ。また、国東市のふるさと納税の返礼品としても用いられている。いずれも、ブランド化戦略の一環だ。

「くにさきOYSTERはまだ完成形ではなく、もっときれいな殻に、もっと旨い牡蠣になる余地が残されていると私は思っています。その部分ではヤンマーの技術力を駆使し、日々研さんして試行錯誤しながら、精度を高めていきたい。そして国東市から、日本のみならず世界にも通用する牡蠣を届けたい。それが、地元の漁師さんの力を借りて行われることで漁業の活性化や新たな雇用の創出につながり、地域の特産品となり、地域振興につながれば、こんなにうれしいことはありませんね」

ヤンマー株式会社 マリンファーム

大分県国東市武蔵町糸原3286
■くにさきOYSTER Webサイト
https://www.kunisakioyster.com/ja/

(中略)

Copyright © 2018 Nihon Unisys, Ltd. All rights reserved.

※本記事で表明されている見解は、必ずしも日本ユニシスグループの見解を反映するものではありません。

---転記終わり---
   ・転記元は「ビジネス エコシステム」(ここ をクリック emoji

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