韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が8日、表明した日本政府の輸出規制強化策に対する撤回要求は、自国の主要企業のトップが対処に奔走する事態に至り「経済界の突き上げで重い腰を上げた」(韓国の研究者)格好となった。韓国では日本が取った措置への反発が強まり、政財界も連動して世論が「オール韓国」化の様相になりつつある。日韓関係の悪化を招いた外交手腕への批判をそらし、日本に矛先を向ける文政権の狙いもうかがえる。
【写真】大統領府高官らとの会議で発言する韓国の文在寅大統領
サムスングループの事実上の経営トップ、李在鎔(イジェヨン)サムスン電子副会長が7日に訪日。目的は明らかにされていないが、今回の輸出規制を巡り日本の財界関係者と意見交換するためとみられている。8日には韓国国会が解決策を模索しようと超党派の訪日団を派遣する方針を決めた。
日韓関係に詳しい東西大(釜山市)の張済国(チャンジェグク)総長(国際関係論)は「国内で日本への反発が大きくなり、文氏も発言せざるを得なくなったのではないか」と政財界が相次ぎ行動に移したことで文大統領が立場を鮮明にしたとの見方を示す。
昨年10月の元徴用工訴訟判決以降、外交上、対立が続く日韓関係。大阪市で6月末に開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、文氏とホスト国の安倍晋三首相との首脳会談も実現には至らなかった。
韓国内ではG20サミットに前後して、政権に批判的な保守系の新聞を中心に、米国や北朝鮮との関係でも芳しい成果を出せない文氏の外交手腕を問う報道が増えていた。だが、日本が規制強化に踏み切ると、風向きは一変。規制対象の材料に関連して、化学兵器生産に使える物質が韓国経由で北朝鮮に流れた疑いを日本の高官が挙げたとの報道を受け、朝鮮日報は「(日本は)フェイク(偽の)ニュースまで動員する国になったのか」と批判した。
さらに、インターネット上に日本製品の不買運動を呼び掛ける書き込みが相次ぎ、日本産ビールの売り上げ減少との報道も出るなど日本への反発が各層に広がる。8日、釜山市の呉巨敦(オゴドン)市長は規制強化について「安倍政権は両国の信頼関係に非常に悪い先例を作っている」と発言。市によると、釜山市長が日本の政権を名指しで批判するのは異例という。
こうした状況について、静岡県立大の奥薗秀樹准教授(韓国政治)は「(文政権の外交について)無策、孤立と批判されていた矛先が一気に日本に向き、財閥とも連動して『オール韓国』の連帯感を演出しているように映る」と述べ、「文政権は安倍首相に救われた側面もあるのではないか」と指摘。張氏も「韓国は外圧を受けると国民が団結する傾向がある。世論の反発がエスカレートすれば、韓日関係が感情論でしか語られなくなる」と懸念する。
西日本新聞社
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