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---転記始め--- ![]() ![]() さて、「吸収糸」について見てみよう。手術後、体の中に糸が残ってしまうような使い方をするとき、たとえば腸管や腹膜を縫ったりするときは、吸収糸を使う場合が多いそうじゃ。一度閉じたお腹を再び開いて抜糸するわけにはいかんからな。大切なのは、「組織同士がしっかりとくっつくまでは糸でしっかりと縫い合わされていなければならない」ということ。糸は、組織が再生された後に徐々に体内に吸収されなければならないのじゃ。
下のグラフは、ラットを使った実験における「糸の張力=抗張力」と「組織の治癒度」を表している。当初は、組織同士はくっついておらず、糸の力でつなぎ合わされている状態だ。治癒が進むにつれ糸の抗張力は弱くなって行き、63日目には糸としての形は残していても抗張力はほとんどない状態に。そしてその後、糸は分解され、210日後には完全に体内に吸収されている。 抗張力保持期間…糸としての形は残っていても、すでに加水分解されて糸としての引っ張る力がなくなるまでの期間。 完全吸収期間…糸が形として全くなくなってしまう期間。抗張力がなくなれば、速やかに吸収されるようになっている。
吸収性縫合糸は、抗張力保持期間や完全吸収期間によってさまざまな種類があり、糸によって、2か月で吸収されるもの、1か月で吸収されるもの、10日ほどで吸収されるものなどがある。
医師は、糸による分解速度の違いや使用部位の癒合するまでの期間を考慮して、適切な吸収糸を選択しているのじゃ。 では、「糸が体内で分解され、吸収される」とはいったいどういうことなのだろうか?合成繊維とはいわゆる「プラスチック」のこと。日常生活で接するプラスチックは堅くて、燃やさない限り溶けないため、「プラスチックが自然に分解されていく」というのは不思議な気がするね。なぜ分解されるのかというと、吸収糸は「ポリグリコール酸」などの「高分子生分解性熱可塑プラスチック」で作られているからじゃ。高分子生分解性熱可塑プラスチックは、水に触れるとつながっている分子がバラバラになり分解されていく「加水分解」という性質を持っているため、吸収糸は手術で縫い合わされた後、体内の水分によって次第に分解され、最後には二酸化炭素と水になり、体外に排泄されるのだ。「高分子生分解性熱可塑プラスチック」が利用されている身近な例では、いずれ溶けてなくなる「エコロジーを意識した風船」などにも利用されている。縫合糸の歴史を見たとき、戦後の「合成繊維の糸の開発」とともに、「吸収糸の開発」は新しいエポックを生み出したそうじゃよ。 ---転記終わり--- ・転記元は「新 私たちの暮らしと医療機器」(ここ をクリック![]() PR |
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