岐阜県内を走る東海道新幹線。冬になると、東京や大阪が晴れていても天候の影響で遅れが発生することがある。その理由が、県内の関ケ原町付近で降る「雪」だ。日本の大動脈の新幹線を遅らせるほどの雪とは-。今月5日、“雪の関ケ原”を歩き、動画を撮影した。温暖な太平洋側を走る東海道新幹線だが、実は豪雪地帯を走っていた。
「遅れのお知らせ 名古屋駅~京都駅間は雪の影響により、速度を落として運転を行っています」
冬になると、よく見る東海道新幹線の運行情報。5~7日にかけても岐阜、滋賀県区間を中心に速度を落として運転したため、遅れが発生した。
東京や大阪は晴れていたが、途中の関ケ原は90センチを超える積雪を記録し、関ケ原合戦の古戦場も一面の銀世界に。東海道新幹線の線路沿いにある関ケ原の桃配運動公園では、乗客の顔が分かるぐらいのゆっくりとした速度で走る新幹線を見ることができた。
なぜ、関ケ原で雪が降るのだろうか。気象予報士の吉野純・岐阜大准教授によると、関ケ原付近の地形は北の伊吹山と南の鈴鹿山脈に挟まれた、谷のような地峡になっている。古くから人は、ここを通って東西を行き来した。今でも東海道新幹線をはじめ、東海道線や名神高速道路、国道21号といった東西をつなぐ交通の大動脈がここに集中し、人の流れが生まれている。
ここに集まるのは風も同じで、関ケ原は風が吹き抜ける“風の谷”。意外に日本海も近く、冬は日本海からの雪雲が発達しながら関ケ原を通り抜けるため、雪が降るのだという。吉野准教授は「雪の量だけで見れば岐阜県北部の方がはるかに多いが、関ケ原は交通の要衝であるがゆえに影響が大きい」と話す。
ちなみに、麓の関ケ原から車で9合目まで登れる伊吹山。気象庁のデータによると、95年前の1927年2月14日に積雪11メートル82センチを記録し、今でも国内の観測史上トップに君臨。山岳観測では世界一という。そうした地域を走っているのだから、東海道新幹線が遅れるのも無理はない。