なぜ軽は日本のガラパゴス車なのか? 海外で高評価でもそのまま輸出されない理由
くるまのニュース2020年03月08日09時30分

日本で独自の進化を遂げた軽自動車は、最新モデルは乗り心地も良く、内外装の質感も高いうえに、安全装備も充実しています。ところが軽自動車は、海外にはそのまま輸出されていません。なぜ軽自動車は海外市場に投入されないのでしょうか。
軽自動車を海外で走らせるとどうなる?
「どうして、海外では軽自動車が走っていないのか?」海外に行って、現地で走るクルマや町なかの交通を見て、そう思ったことはないでしょうか。
見方を180度変えると、日本に来る外国人にとっては「どうして、日本ではこんなにたくさんの小さなクルマが走っているのか?」と思うのです。
東京や京都、札幌など日本の全国各地で、主婦が、高齢者が、若者が、郵便局の配達業務の人が、農家の人が、スイスイと軽自動車を走らせている光景を見て、外国人は心底驚きます。
しかも、日本ではおなじみのホンダ「N-BOX」やダイハツ「タント」、スズキの軽トラック「キャリイ」など、外国人にとっては初めて見るクルマばかりです。
外国人が実際に軽自動車に乗ると、その驚きは倍増します。知り合いの軽自動車に同乗したり、観光地でレンタカーとして軽自動車を借りたりすると、多彩なシートアレンジや装備品の多さなど、クオリティの高さにビックリするそうです。
しかも、最新モデルの軽自動車は乗り心地も良く、高速道路では十分な加速性能を味わうことができます。さらには、前走車を追従するアダプティブクルーズコントロールや、車線逸脱防止のための自動操舵補助機能が搭載されるモデルまで登場。
「日本の小さいクルマは凄い。まるで、未来のクルマだ」と絶賛する外国人はけっして珍しくありません。
軽自動車を実際に海外で走らせてみると、どうなるのでしょうか。いまから10年ちょっと前、2000年代後半に、筆者(桃田健史)は米・カリフォルニアで三菱「i(アイ)」を試乗しました。
三菱自動車の北米営業本部が日本から取り寄せたクルマで、もちろん右ハンドルです。当時、三菱本社は電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」の量産準備に入っていて、海外でのテスト走行が控えていました。
その前段として、「i-MiEV」の原型である軽自動車「i」を北米営業本部のアメリカ人関係者に試乗してもらうというのが目的で、その空き時間を使って日本の自動車雑誌用の取材をしたのです。
取材は1日のみでしたが、朝からロサンゼルス郊外のサイプレス市に「i」を取りに行き、近隣の市街地やフリーウェイを舞台に、夕方まで試乗と撮影をおこないました。
まず驚いたのが、周囲の反応です。フリーウェイを走っていても、隣の車線を走るクルマが窓を開けて「それ、いつから売るんだ?」と聞いてくる始末。
ショッピングモールの駐車場では「i」の周りが人だかりとなりました。「なんて小さいんだ!」「衝突しても安全なんですか?」「エンジンの大きさは?」「何人乗れるんですか?」「祖父が近所の買い物用にぴったりだ」といった感じです。
走行性能については、高速の合流でパワー不足を感じたのと、大型トラックが多数走行するフリーウェイでは、路面のうねりが問題でした。一般乗用車では気になりませんが、軽自動車のボディサイズと重量だと、そのうねりで「波乗り」して、船酔いしたような感じで気持ちが悪くなってしまいました。
そして、なんといっても、SUVなど乗用車の大型化が進むアメリカ市場では、フリーウェイでも市街地でも周囲に壁ができた感じになるなど、軽自動車の小ささが目立ち、「もしぶつかったら…」と恐怖を覚えました。
その数年後、アメリカで少量販売された「i-MiEV」北米仕様にも試乗しましたが、日本仕様よりボディサイズが大きくなり、重量増によってフリーウェイでの波乗り状態は解消されていました。
正直なところ、アメリカで日本の軽自動車をそのまま売るのは難しいと、筆者はいまでも考えています。
日本向けとして進化を遂げた軽自動車の海外展開はアリ? ナシ?
アメリカで軽自動車を販売するのは難しそうですが、ほかの国ではどうなのでしょうか。じつは、軽自動車っぽいクルマは、欧州、中国、インドなどに存在しています。
なかでも欧州では、欧州委員会(EC)が定める車両規定に、クワドリサイクル(規格名称:L6eなど)があります。車格としては、軽自動車と自動二輪車の中間的な存在です。
日本では、2020年冬にトヨタが発売予定の超小型EVがありますが、欧州クワドリサイクルは日本での超小型EVに近い位置付けです。パワートレインはEVもありますが、排気量400ccから500cc程度のガソリン車もあります。このほかに、中国やインドにも、クワドリサイクルに近い小さなクルマが販売されています。
こうした海外の超小型車は、最高速度が時速50kmから60kmと軽自動車に比べると遅く、乗り心地や車内のクオリティもけっして高くありません。
一方の軽自動車は、ボディサイズは最大で全長3400mm×全幅1480mm×全高2000mm、エンジン排気量も660cc以下と道路車両運送法で定められていますが、小型乗用車顔負けの走行性能とクルマとしての総合的なクオリティが高いのが特徴です。
これらの制限があるなかで、最良化、最適化を複数メーカー間で激しい開発競争をした結果、究極のガラパゴスカー・軽自動車が出来上がったのです。
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軽自動車の新車試乗会で筆者は、「中国、インド、東南アジアで、軽自動車を売っても良いのでは?」とメーカー側によく質問します。
これ対して「軽自動車はあまりにも日本市場向けの、仕様や価格にしているので、ほかの国の需要とマッチしないと思います」という答えがほとんどです。
最近では、車体構造など軽自動車との共通性を持たせた小型車をインドや東南アジアで発売するケースが増えてきましたが、軽自動車をそのまま持ち込む、という話は当分の間は実現しそうにないようです。
(以下省略)
---転記終わり---
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