世界一の原油産出国はアメリカ合衆国…世界各国の原油生産量動向

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↑ かつて原油生産といえば中東が一番とのイメージがあったが……

原油と石油の仕切り分け、生産量と消費量

多様なエネルギー源が開発されても石油(原油)が社会生活を支える主要エネルギー源であることに違いは無い。その産出量の現状を米エネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)の公開データから確認していく。

まず分量の単位の説明から。「バレル」は石油・原油の量を測る単位。樽(たる)が語源で42ガロン・158.987294928リットル。「石油」はいわゆる採掘直後の「油」を指す場合もあるし、採掘した油からガスや水分、その他異物を大まかに取り除いた、精製前のものを指す場合もある(こちらはむしろ「原油(Crude oil)」と呼ぶ場合が多い)。さらには原油を精製したあとの重油や軽油、ガソリンを合わせて呼ぶこともある。今回対象となるのは「原油」と表記しているものはそのまま「原油(Crude oil)」、石油消費量として掲載している「石油」は原油から精製された精製物(原油精製品)を指すこととする。

それではまず原油生産量トップ10。今項目は現時点で2014年の値が取得可能なため、2014年の値で上位を抽出し、その順位で5年分の動向も併記した。

↑ 原油生産量トップ10(2010-2014年、万バレル/日)
↑ 原油生産量トップ10(2010-2014年、万バレル/日)

EIAの公開データの上では、現在原油生産量のトップを行くのはサウジアラビアでもロシアでも無く、アメリカ合衆国。しかもこの数年で大きな伸びを示している。これは同国によるシェールガス・シェールオイルの商業ベースでの量産技術開発とその普及に伴い、生産量が飛躍的に増加した結果。カナダもその恩恵を受けており、アメリカ合衆国ほどではないものの、確実に伸びている。

増加傾向にあるのは他にもイラクやUAE。イランは逆に漸減、サウジアラビアは頭打ち的な状態。

続いてこの生産量トップ10の国それぞれにおける、自国内の「石油」消費量を併記する。単純な足し引きで概念レベルの考察となるが、生産量よりも消費量が多い場合には、どこかから輸入しなければならない。逆なら備蓄や輸出が可能になる。

現実にはもっと複雑で、単純に原油と原油からの精製品の量を比較するのはやや無理があり、また国内に精製施設のあるなしも考慮しなければならない。さらに精製品を直接輸出入する場合もある。もちろん原油ベースでの品質の違いもあり、「生産量>>消費量」でも輸入する場合も少なくない。あくまでも概念的、目安的なものと見てほしい。なお消費量は現時点で2013年の値が最新値なので、それを適用する。

↑ 1日あたりの原油生産量と石油消費量(生産量は2014年、消費量は2013年、万バレル/日)
↑ 1日あたりの原油生産量と石油消費量(生産量は2014年、消費量は2013年、万バレル/日)

アメリカ合衆国は大量の原油を産出しておきながら、それでもなお石油消費量の方が多い。他方、原油輸出国として知られているサウジアラビアやロシアでは大幅に生産量が超過しており、その実情を改めて認識できる。UAEやイラン、イラクも同様。他方中国は絶対量こそアメリカ合衆国に及ばないものの、大幅に消費量が生産量を超えており、不足感が強い状態となっている。

原油の輸入量上位は?

EIAには「原油の」輸出入のデータも収録されている。そこでそのうち輸入量の上位国を確認しておく。こちらは現時点で2012年の値が最新値なので、2012年の値で順位を確認して上位10位国の、5年間の動向を併記する。

↑ 原油輸入量トップ15(2010-2012年、万バレル/日)
↑ 原油輸入量トップ15(2010-2012年、万バレル/日)

原油の輸入量では、アメリカ合衆国が最上位。上記のグラフの通り、大量の原油を自国で生産してもなお、国内消費をまかなうには不足しており、多くの原油を輸入している。もっとも最近ではシェールガス・オイルの恩恵を受けて国内生産で充足できる量が増えたため、輸入量も減少のさなかにある。

他方、中国や韓国は増加の一途をたどっている(中国は2012年に大きく落ちているが)。国内の経済成長に伴い、国内生産だけでは充足しきれなくなったため、輸入を増やしている次第である。

今件はあくまでも(消費量をのぞけば)原油の動向を見たもので、ガソリンや重油などの原油精製品の動向までは追いかけていない。例えば原油精製品に限れば輸出量トップはアメリカ合衆国で次いでオランダ、輸入量トップはシンガポールで次いでオランダとなる(いずれも2012年ベース)。原油の生産量では世界でトップ、原油精製品などの輸出量でもトップのアメリカ合衆国が、それでもなお大量の原油を輸入し、消費しているのを見るに、いかに同国が巨大な経済力を有しているかが認識できよう。

アメリカ合衆国の石油事情の変化は、シェールガス・オイルの採掘に係わる技術革新と、その普及によるところが大きい。元々存在は確認されていたが、それが採算ベースで採掘できるようになったことで、同国のエネルギー戦略にも大きな影響・変化が生じている。

エネルギーの生産・調達・消費動向は、国の戦略にも大きな影響を与える。各国の原油・石油の動きが、その国の施策の変化を裏付ける、類推する手立てとなることは間違いない。

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(以下省略)