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北朝鮮の最高指導者である金正恩氏。どことなくトランプ氏に似ている? 写真は朝鮮中央通信提供(ロイター/KCNA)© 東洋経済オンライン 北朝鮮の最高指導者である金正恩氏。どことなくトランプ氏に似ている? 写真は…  

 米国で新たな大統領が就任するたびに、新大統領と個人的なつながりを持つ一団が政権の要職に就く例が生じる。たとえばケネディ元大統領が自らのルーツであるアイルランド系の人々を重用したケースがそれに当たる。

 だが、自身の家族にまでその例を当てはめたのは、ドナルド・トランプ氏が初めてだ。

「トランプ王朝」の面々

 トランプ氏の子供は内外の経験に乏しいにもかかわらず、政権の意思決定に大きな役割を果たそうとしている。すでに娘のイヴァンカ氏は、トランプ氏と日本の安倍晋三首相との非公式会談に同席。息子のドナルド・ジュニア氏は、新政権の内務長官にライアン・ジンク氏を指名するうえで、主要な役割を果たした。

 トランプ氏はいまや、自身の王朝をホワイトハウスに鎮座させている。イヴァンカ氏の夫で不動産投資家のジャレッド・クシュナー氏は、中東和平のプロセスに、特使としてひと役買うことになりそうだ。

 ドナルド・ジュニア氏とその弟はトランプ氏の事業を統括する不動産会社「トランプ・オーガナイゼーション」を切り盛りするため、ニューヨークに残るだろう。

 だが、同氏は現在でも子供たちとともに、トランプ・オーガナイゼーションの役員を務める。こうした状況を考えると、子供たちが政権に影響力を及ぼすことは疑いようがない。

 トランプ氏の事業は、血の繋がりや忠誠心によって支えられてきた。トランプ・オーガナイゼーション幹部の平均勤続年数は17年と、他の同じ規模の米国企業よりも非常に長い。30年をトランプ氏に捧げてきた者もいる。

 ボストン・コンサルティング・グループの2016年の調査によれば、年商10億ドル超の米国企業の3分の1は同族保有であり、うち4割が同族経営だという。



・上記の転記元はこちら emoji


(これより下は上記記事の続き/2頁目です)

世界最長の独裁政権である北朝鮮の「金王朝」と「トランプ王朝」を単純比較するのは難しいかもしれない。だが、いくつか類似点はある。

 第1に、何よりも忠誠心が優先される点だ。北朝鮮の幹部や将軍が最高指導者の金正恩(キム・ジョンウン)氏を支持しなければならないように、トランプ氏のホワイトハウスは「一族」に揺るがない忠誠を求める。

 トランプ政権の大統領首席補佐官に指名されたラインス・プリーバス氏と、首席戦略官・上級顧問のスティーブン・バノン氏は、こうした意向を公然と受け入れている。両氏は、経験が皆無であるクシュナー氏が政権の意思決定に深く関われるようにすると誓った。

 第2は、能力とは関係なく、親族に重要なポストを与える点だ。金正恩氏が姉と兄弟を、序列を無視して朝鮮労働党の要職に就かせたように、トランプ氏も自身の家族に主要な地位を割り当てる可能性が高い。



(これより下は上記機序の続き/3頁目です)


影響力は閣僚をしのぎ、失敗は「あり得ない」

 トランプ氏の親族は、正式に任命された閣僚たちをしのぐ事実上の影響力を行使することになり、賢明な閣僚たちはそれを許容するのではないだろうか。

 第3は、予想外の昇進や突然の追放が起きる点だ。北朝鮮では、上層部がこうしたすべてを取り仕切った。トランプ氏はテレビ番組のパーソナリティーを務めていた頃、他者を激しく攻撃する一方で、時には普通の労働者をシンデレラのようにもてはやした。

 金王朝と同様にトランプ王朝でも、うまくいかなかった政策の担当者は責任を取らされるだろう。しかし、一族の面々が、そうした責任を問われることはあるまい。

 トランプ陣営のウェブ戦略を統括したブラッド・パースケール氏は大統領選の2週間前、トランプ氏が牛耳るであろうホワイトハウスの姿をこう表現した。「わが忠誠はトランプ一族に向けられている」。この言葉はまさに北朝鮮をほうふつとさせる。

(週刊東洋経済1月21日号)